膝関節・股関節内注射と手術回避

膝関節・股関節内注射と手術回避


はじめに

私の元へは膝関節・股関節の手術を回避して保存的に症状改善を願う患者が全国から訪れます。ほとんどの整形外科医が人工関節の手術を勧める中、私は時代を逆行し、手術を回避する治療法を研究・開発してきた極めて稀な医師と言えます。

特に膝関節骨壊死と診断され、手術しか方法がないと言われている患者を保存的に治療して完治させた実績はこれまで約20例以上あり、膝骨壊死の治療目的で患者が全国から来院しています。私の忠告通りに従えばほぼ全例手術を回避できます(こちらを参)。


当然ながら普通の変形性膝関節症で手術を勧められた患者にもほとんど全例で手術回避ができており(3年間で2例は手術に送りましたがそれ以外の全員です)、私の指導を無視することがない限り保存的に長年過ごせます。そして最終的にも手術になりません。その理由は長年保存的に過ごせれば歳と共に運動量が低下して行き、現状維持ができるようになるからです。

私は元整形外科医ですから、外科医の言い分を知っています。「いずれは変形して歩けなくなるのだから今すぐ手術をしましょう。」です。しかし、外科医の期待を裏切り、適切な処置をしていれば変形は進みません。こちらにその証拠を示した文献があります。


そして、外科医としてはあるまじき行為なのですが、股関節手術をしても脱臼のリスクがあること、膝関節の手術をすると膝があまり曲がらなくなることを患者に告げない医師がいます。


さて、関節内注射で保存的に治療するにはケナコルトの使用が不可欠となります。が、この薬剤は「あまりにも効き目が強い」ために使い方を誤ると関節破壊が進むことがあります。ですから、この薬剤をケナコルトの研究をしていない医師が使用することを私は勧めません。テレビや雑誌では「ステロイドを使うと骨がボロボロになる」と言って患者を脅しているのを常に見かけます。そしてケナコルトを使用する医師をならず者・無法者扱いすることが定例です。問題は使い方にあるというのに、この薬事態を否定する医師(特に教授)が多いようです。しかし、それでもこの薬を教授の目を盗んで使用する医師が世界に絶えません。理由は「あまりにも効き目が強い」からです。その中で私は副作用を起こさないケナコルトの使用方法を数十年前から研究しました。また、ケナコルト使用に関しては運動量や痛みの再発の期間、膝の熱感や腫れなどを患者のコンディションに応じて増減しなければならず、そういう知識を普通の医師は持ちませんのでケナコルトを使用すると悪化させることがあります(ケナコルトの研究論文はこちら)。


このようにケナコルトの使用法は難しいため一般的な医師は用いるべきではありません。厳重なる使用法を行い、使用した患者の管理を厳重に行ってこそ使用できるのであり、「ケナコルトは関節を破壊する」と吹聴する教授たちにむしろ賛同しています。

近所から来院する患者は、遠方から来院する患者と違い、このような厳密なケナコルト管理に従わない場合があります。その時は注射自体が危険因子となるので即刻治療を中止します。どうやら近所の患者は私が「軽々しく注射をしている」と思っているらしく、理解する者が非常に少ないことを残念に思います。


股関節内注射は難しいが効き目は高い

股関節内注射は一般の医師には決してできません。不注意に行うと大腿動脈や大腿神経を損傷するおそれがあり、しかも関節内に長い針を透視下に入れていく技術はたやすくありません。よって股関節内注射を継続的に行い、人工関節の手術を回避させるという治療を行っている医師は私以外では極めて稀です。


しかし、注射の治療効果は平均して1か月以上あり、月に1回以下の治療で痛みが激減しますので実用性は極めて高い注射となっています。整形外科医の予想を裏切り、膝関節の文献と同様、変形はほとんど進行しません。それどころか、注射間隔は「重労働をしていない限り広がっていく」傾向にあり、私の治療では徐々に通院回数が減っていく傾向にあります。


ただし、透視下に行う関節内注射は難易度が高いので治療費は約1万円かかります(自費です)。人工股関節の手術は、機械の耐用年数が20年以内であることを考えると、できれば70歳くらいまで待つことが理想です。変形が進むと痛すぎてその歳まで待てません。ですから私の治療はそういう患者を救えるものです。


関節内注射は決して簡単ではない

関節内注射が「痛い」という話をよく聞きます。一般的な医師が使用する針は22か23G針であり私が使用する27Gよりも太いので痛みの神経に針が当たる確率が高くなります。また、関節内穿刺(水をぬく)をする医師が多く、その場合はさらに太い18G針を用いるからです。一般的な医師はヒアルロン酸を関節内に入れますが、関節内に水があるとヒアルロン酸が薄まって効果が悪くなるので水を抜くという原理です。針が太ければ痛みは強烈です。


私は水を抜きません。水は鼻水と同じで、かんでもまた鼻水が出ます。鼻水が出なくなるように炎症を抑えるのが本当の対処法です。私はケナコルトを用いて炎症を抑え、水が出ないようにするので、水は少しずつ引いていきます。だから太い針を用いることはありません。どうしても水を抜く必要がある時は局所麻酔薬で痛みを感じないようにしてから穿刺します。私はこうした「痛みを与えない処置」をすることは医師ならば当然第一に行うべきと考えています。


さて、私が医師10年目を超えて、注射の腕がかなり向上した時期に「膝への注射がどのくらいの確率でミス注射になるのか?」を調べたことがありました。約5回に1回でした。どれほど注意深く行っても約20%がミスになり、関節腔内以外の組織に注射の液体が流入します。ミスすると当然ながら痛みが強烈です。効果もありません。


私は昔から注射の腕はうまいと同僚に言われていましたが、その私でさえ5回に1回はミスするのですから、うまくない医師はもっと頻繁に注射をミスします。私はこのミスをゼロにしようと毎日試行錯誤しました。そのために必要なことはまず、ミスを知るための方法です。私はミスをして膨隆した組織を指先で調べるという調査法をあみだしましたが、他の医師がそんなことをしているのを見たことがありません。つまり、一般的な医師はミスしたことさえわからないし調べることもしません。これではミスをゼロにするのは程遠く、私の推理によると、ベテランの医師でも10~20%以上の確率でミスをします。私は「手術を回避させる治療」を行っていますから1回のミスがきっかけで膝が痛くなるということを「許さない」ことをポリシーにしてきました。そのため絶対にミスをしません。どうすれば100%ミスをしないのか? それは成功するまでやり直すことです。さらにそのためにはミスを調べる方法を編み出すことです。手で調べる以外にもいろんな方法があります。


このような「自分に極めて厳しくする」ということでのみ、手術を回避する保存的治療ができるのであり、「ケナコルトを漠然と入れる」だけで私のような治療成績を出すことは不可能です。


マネのできない膝注射手技

膝の注射は整形外科医が研修1年目から学ぶ初歩的な注射です。しかし、膝の変形や足の太さは人によって異なり、それら全てに対応しながら注射ができるようになるには、膝注射をうまくなりたいと思って修行しても最低20年はかかります。大学の教授先生には難しいでしょう(経験数が圧倒的に少ない)。


注射は針が太いほどミスがすくなくなります。理由は針が太いと関節内に針が入ったとたんにシリンダーの圧が急降下するので「入ったか入ってないか?」の指先の感覚がはっきりわかりやすいからです。しかし、針が太ければ太いほど、血管損傷、神経損傷、感染、血腫、ステロイド使用時のリスク増加がつきまとい、そして「注射が痛い」でしょう。


これを防ぐために局所麻酔を最初に行う医師も稀にいます。しかし、麻酔の注射も痛いですし、結局二度注射することと同じですから上記リスクも2倍になります。


よって、細い針を用いること、的確に関節内に針を進める技術の右に出る技術はありません。技術が下手な医師は関節内に針が入っていることに気づかず、そのまま針を進めて軟骨を傷つけるものです。あまりの痛さに激怒する患者もいます。そしてベテランの医師でも10~20%は関節外に注射をしてしまいますのでその場合は「痛い&効かない」注射になります。膝が太く皮下脂肪の多い患者では関節の隙間がどこなのかわからないので、医師はさらにミスをします。


こうした現状の中、膝関節内に正確に注射をするには「針先に組織が当たっている感触を得ることができる繊細な神経」と「シリンダーの圧力の微妙な変化を感じ取る神経」が最低でも必要です。針は、上皮・真皮・皮下組織・関節包を経て関節内に入りますが、これらの組織は硬さが異なるので達人級の医師になると、それぞれを通過する際に針がどこを通っているのか?を針先の感覚とシリンダー圧の両方から推測することができます。この技術があってこそ、ようやくミス注射を少なくすることができます。しかし細い針を使えば使うほど、より高度な感覚が必要になるのでそうそう簡単に誰もが細い針を使うことができません。


また、膝内には滑膜がわかめのようにただよっており、滑膜の先端に針が当たると注射液が流れにくくなり、シリンダー圧の減弱感を知ることができなくなります。その場合はミス注射なのか、正しく入っているのに圧が高いだけなのかを判別することができません。それが判別できるようになるには、さらなる喧々と修行が必要です。普通の医師は一生かかってもそうした領域に達することができません。


また、私はミスした注射を察知する検査法をあみだしましたが、それにより、「注射が効かない」ということがほぼゼロになりました。ミスだとわかればやり直せばよいのですから。やり直せば必ず効きます。


この「必ず効く」という私の技術を用いると、診断技量も格段高くなります。それは、膝の痛みが「本当に関節内の問題なのか? それとも関節外の問題や神経痛が原因なのか?」がはっきりするからです。注射はやった。しかし注射が入っていないかもしれない。5回に1回はミスをするという状況では、「効かなかった」と患者が訴えた場合に、それが注射ミスのせいなのか、それとも関節外の病変なのか?を判断できません。しかし、ほぼ100%確実に関節内に薬液を入れることができる腕があったなら、患者が「効かない」と訴えたら、それは関節外病変と診断をつけることができ、膝の痛みの原因を探っていく材料になります。こうした高等な診断技術は、高度な技量が生み出すものであり、大学の教授にさえできない診断技術なのです。


医師にとってはたかが¥800-の治療技術であり、教授先生になるような医師であれば、「上手くなりたい」と思わない注射技術です。膝関節内注射は一見、誰にでもできる初歩的な注射に見えますが、実際は20年選手の医師にさえできない注射です。