腰部神経根ブロック

腰部神経根ブロック

 

腰部神経根ブロックは腰痛関連疾患の最終兵器です。「手術をしなければ治りません」と医師に宣告された腰痛・坐骨神経痛・麻痺やしびれにさえ効果のある「保存的療法の中で最も威力のあるブロック注射」です。

ところが神経根ブロックには多くのリスクがあり、よほど症状が重い時以外はしてはいけないブロック注射という位置づけにあります。私はそれらのリスクをカットする技術を日々考案し、そして神経根ブロックが最大に効果を発揮するような薬剤の使い方を行い、合併症を作らず、改善させる実績を重ねてきました(技術の詳細は企業秘密です)。


そうした技術を持たない医師の神経根ブロックを受けることはかなり危険です。その理由を述べます。

未熟な医師によるブロックが危険な理由

  • 神経根ブロックは25G以上の太い針を直接神経に刺す手技ですから100%神経を損傷します。神経は再生能力が高いため大事に至らない場合がほとんどですが、神経を損傷するという事実は避けられません。刺し方が悪いと後遺症が出る可能性を秘めています。
  • 神経に刺した上で造影剤を流します。造影剤は体に対して安全性が確立されていない薬品です。レントゲンに移る液体ですからとても比重が高い異物です。それを神経鞘内に入れるわけですから、神経組織を多少なりとも炎症させます。後遺症になることは少ないと思われますが、一時的に症状を悪化させる危険性を秘めています。
  • 神経根に針を刺すと、非常に重要な根動脈を損傷させるリスクがあります。万一根動脈に塞栓を起こすと、神経麻痺の後遺症が起こる可能性があります。
  • ケナコルトという薬剤を神経根ブロックに用いることは禁じられていますが、これはケナコルトが固形であり、根動脈を刺して注入、動脈塞栓を起こして下肢麻痺という後遺症を起こした例があるからです。
  • 注射の痛みが尋常ではなく、場合によっては気絶するほどです。神経に針を刺して造影剤を入れるのですから当然でしょう。

これらのリスクを一つでも回避できない医師に神経根ブロックを任せることは私は賛成しません。すなわち神経根ブロックは「医師免許がある者ならだれが行ってもよい注射」では決してなく、上記を回避することのできる技術を持つ医師にしっかりと指導してもらった上で行うべきブロック注射であると思います。


これらのリスクを避けるための唯一の方法は「神経根を刺さずに行う手技」です。私は医師3年目に神経根ブロックの担当を任せられ、その際に年間約200例を行い、以降神経根ブロック手技の改善に努めました。そしてすぐに「神経根ブロックは神経に直接刺さずに行っても効果が変わらないどころか、成績がよい。」ことを発見します。つまり、医師3年目から現在に至るまで「神経根に直接針を刺さないで注射する方法」を研究してきたわけです。局麻薬を使用しながら針を進め、そして神経を直接刺しませんのでほぼ痛みはありません。さらに神経を損傷しない。根動脈を損傷しない。造影剤を神経鞘内に入れない。ので合併症もありません。また、問題となるケナコルトですが、根動脈を刺すことがありませんので使用可能となります。ただし、ケナコルトの使用法は厳格でなければなりません。ケナコルトには副作用が多いからです。私は同時にケナコルトの厳格な使用法も研究を進め、現在の使用ガイドラインを築くに至りましたが、脊椎外科の中には「神経根ブロックでケナコルトを乱用している医師がいる」ことを知っています。


最近になり、私と同じ手技で神経根ブロックを行う医師が出現し始め、私の手技は「抵抗消失法」と呼ばれることを知りました。これは神経根の少し手前で注射薬の流入圧が低くなるポイントがあり、その地点で注射をするという方法です(いわゆる寸止め)。


この方法は解剖学的知識があることが重要で、さらに針の抵抗感覚が鍛えられていなければできません。よって誰にでもできる手技ではありません。私はすでに25年前から抵抗消失法を行っており、本法の実行者としてはおそらく日本ではもっとも古い、つまり開発者と言ってよいほど昔から行ってきました。


通常、神経根ブロックは3回までしかしません。それはこの手技が神経根を傷つける可能性が高いことの証拠でもあります。3回以上連続は危険が高いということです。しかしながら抵抗消失法では何度行っても神経は損傷しません。よって私は難治性の腰椎疾患に根気よくこれをおこなって治療することができ、結果、あらゆる難治腰痛疾患に対応できるようになりました。


神経根ブロックは脊椎術後の失敗例にも効果があるほどに強力な治療法です。しかし、これほど重大なリスクがあるためブロックは軽々しく受けることをお勧めしません。


本当は「腰の手術をした方がよい」と言われた場合、その前に、必ず一度は神経根ブロックを受けるべきなのです。なぜなら、手術の必要がないほどに改善することがあるからです。その割合は私の医院に来た難治性腰痛疾患患者のほぼ全員です。最近3年半で私の外来患者の中で手術に至った症例はゼロです。しかも私の医院は全国から「どうやっても治らない」という強者だけがあつまる医院です。ただし、効果がなかった者がゼロではありません。固定手術後に症状が悪化した60代の男性1例だけは数十回の治療の上、治療継続をあきらめました。この男性は「変形が強すぎて再手術は無理」と宣言されています。


神経根ブロックは最強です。しかしリスクを考えると抵抗消失法以外は受けるべきではないと私は考えます。過激な文章で申し訳ありませんが、少しでも患者を救いたい一心です。そうすれば手術を受けなくても一生過ごせる例はかなり増えると思います。